サヨナラの向こう側
「すみません」


「花火大会か」


「うん、でも今年は行けないな、と思って」


「誰か行く相手がいるのか?」


「いないよ、去年は千広の家族と行ったけど、今年は千広に彼女いるし」



この頃は、お客さんがいなければ、慶とタメ口で話せる仲になってた。



「じゃあ、俺が一緒に行ってやるよ」


「そんな、『じゃあ』なんてイヤイヤならいいよ、それにバイトでしょ」


「たぶんその日は、店長たちが店番するはずだから」


「なんで?」


「さあ、稼ぎ時だからじゃねーの」


「ふーん、考えとく」


「花火始まるまで店手伝って、それから行くからな」


「えっ、もう決定なの?」


「当たり前」



常連さんが来たので、その日はそれ以上話さなかった。


なんで私が、慶と一緒に、花火大会?




あっ、花火大会の前に、部活だ。


本読みして、間違いがないかチェックしないと。


皆川先生に会えるまで、髪を切りに行って。


先生に送った暑中お見舞いのハガキ、返事こないな。


彼女と出かけてるのかな。


ねえ先生、私のことなんか、思い出さない?






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