奇聞録四巡目
とりつかれたように絵を描いていたあいつは、一貫してテーマが決まっていた。
猫の絵だった。
可愛いとか、写実的とか、抽象的とかではない。
猫の目だけを描く。
唸りながら。
バイトの帰りに、ムシャクシャしたのか、人懐っこい野良猫を蹴ってあやめた日からだ。
眠れないらしく、ひたすら猫の目だけを描き続けて、眠りたくて飛び降り自殺した。
変な場所に飛び降りた為に、7日発見されなかった。
飛び出した目玉で野良猫がじゃれていたと言う。