恋愛症候群
徹也・テツヤ・


昔誰かが言っていた
本当に好きなひととは結ばれないって



「愛美ちゃん、可愛いね」

『え、そんなことないです!』

私がお店に入ったばかりの頃
よく歳上のお客さんに気に入られてた

その中で徹也は
私に付いてくれた初めての
若いお客さんだった

「ね、番号教えてよ」

『わ、分かりました、だから徹也さん…
私の上から降りて…恥ずかしいです…』


あの日は相当酔ってた
いつも会社の人と一緒に来てて
一気飲みとかやってたかな

徹也は私の上に股がって
とろんとさせた眼で
私を見つめていた

眼は一重で細め
笑うと綺麗に弧を描く

ふわふわの髪の毛は
徹也の優しい顔立ちにぴったり


「やだ、どかない」

『ど、どうして…』

「愛美ちゃん、やっと俺のとこ
来てくれたんだもん」

ねー、なんて言いながら
私を柔く抱き締めた

当時男のひとに慣れていない私は
抱き締められてることにパニックだった

「ちょい、原田やり過ぎ!」

「愛美やっと来たから嬉しいんだよね?」

徹也の同僚の翔くんも言葉では言うけど、
酔っぱらってる徹也を見て面白がってて

その時一緒に席に付いてた美香さんも
徹也が私を気に入ってる様子を
お酒を作りながら微笑んで見ていた

「愛美ちゃんはー、俺のですから!」

美香さんが作ったお酒を受け取り
先輩たちをその酔っぱらった眼で睨んでる

「どーした原田、お前酔ってんのか」

「原ちゃんも飲みたいときあるのよ」

翔くんと同じく、徹也の同僚の祐一さんが
ママの肩に左手を回して抱き寄せながら
徹也と私を見て楽しそうに笑っていた
< 5 / 8 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop