ゾンビバスター~4人の戦士たち~
 和己は気がつくと、うつぶせに眠った状態だった。湿布を貼ってもらううちに、眠ってしまったようだ。
 視界に入る範囲に視線を動かすと、明美の姿がない。
 不安になって起き上がる。見つけた。聖の側に座り込み、濡れたタオルで顔を拭ってやっているところだった。こちらに気付いたらしく、手を止めて顔を上げた。

「顔、汚れてたからさ。意識なくてもこうしてやれば気持ちいいかなって」

 再び聖に視線を戻し、顔を拭き始める。
 和己からはうつむいた明美の顔がよく見えなかった。そのまつげに隠れた瞳はどんな表情を隠してるんだ? 自分以外の奴に優しさをみせる明美を、快くないと感じている自分に、不謹慎だなと自嘲気味に笑う。
 わかってる。明美は誰のものでもない。
 だが、彼女を独占したいという気持ちが沸き上がってきて、和己はそんな自分に驚いていた。

 そんな和己の想いは露知らず、聖の顔をすっかり綺麗に拭いてやると明美は満足げに頷く。
 微動だにしない聖。けれど飲ませた聖水の力と、ひとみの言葉を信じたかった。

「明美」

「ん?」

 和己に呼ばれ、立ち上がろうと腰を浮かしかけた明美も、声をかけた和己も、聖のまぶたが僅かに震えたのに気付かない。

「お前にいわれたことの意味がわかった」

「意味? なんだっけ?」

「嫉妬の意味――」

「!?」

 和己を見ながら立ち上がる明美は、自分に起きた異変にすぐには気付けなかった。片方の腕に温かさを感じ、引っ張られる。どきっとして足元の聖を見た。まぶたは閉じたまま。けれどその腕は、明美の手首をしっかり掴んでいる。

「聖……?」

 もしかしてゾンビに!?
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