イジワル上司と秘密恋愛


——自分で自分の考えが甘かったな、と思ったのは、ホテルの部屋に入り彼女をベッドに横たわらせたときだった。

「うぅ……ん、」

寝苦しいのか、切なげに顔をしかめ身じろぎした春澤に、迂闊にも劣情を抱いてしまう。

「大丈夫か、苦しいのか?」

純粋な介抱の気持ちと安直な下心と、ふたつの思いでブラウスのボタンに手を掛けた。

夏らしいサラリとした薄い生地が開いていくたび、彼女の苦しげな表情は和らぎ、相反するように俺の欲が耐えきれなくなっていく。

「……志乃」

無防備な色気を晒す彼女に、漏れる吐息の如く熱く呼びかければ、眠っていたように閉じていた瞼がゆっくりと開かれた。

そして、愛らしいアーモンド型の瞳にボンヤリと俺を映して彼女は言う。


「……好き……綾部さん……」


酔っていただけかもしれない。寝ぼけていたのかもしれない。けど、そんなことはもうどうでも良かった。

「好きだ、志乃」

俺はローズピンクの口紅に彩られたまだ幼さの残る唇に、強引なキスをした。
 
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