イジワル上司と秘密恋愛
困った。この部屋の窓は小さいし、唯一の出入口である扉がそんな状態ではせっかく助けが来たのに出られそうにない。
どうしようと考えあぐねていた私は、頭の上がポッカリ空いていたことを思い出した。
「綾部さん! この部屋、天井に大きな穴が空いてるんです。二階から梯子とか下ろしてくれたら、もしかして出られるかも」
「分かった、何か使えるもの探してくる」
綾部さんはそう言い残し、扉から離れていく。そしてしばらく経った後。
「春澤!」と、頭の上から呼ぶ声が聞こえ、顔を上向かせると綾部さんがロープを手に二階に立っているのが見えた。
「待ってろ、今こっちの柱にロープを結ぶから。それに掴まって登れば——」
頼もしい彼の姿に、これで助かるんだと希望が胸に湧いたときだった。
頭の上の天井からパラパラとコンクリの欠片が落ちてきたかと思うと
「ぅわっ!?」
「綾部さ……きゃあぁ!!」
彼の立っていた足元がとつぜん、大きな音を立てて崩れてしまった。
ガラガラという轟音と凄まじい砂埃、そしてコンクリの破片に混じって何かがベッドの上に落ちてきた衝撃。
思わず頭を庇って目を瞑ると、すぐにあたりは静けさを取り戻し、もうもうと埃で白くなったベッドの上には大小のコンクリの欠片と、綾部さんが落ちてきていた。