イジワル上司と秘密恋愛

木下くんの責める言葉を聞いて、勝手に涙が滲んできてしまう。

出来ることなら全部言ってしまいたい。

けれど、今まで誰にも言えなかった。綾部さんとのこと。友達にも誰にも。

だって、彼には“マリ”さんがいるんだもの。私が今の関係を口外したら必ず綾部さんに迷惑が掛かってしまう。

私は浮気相手だから。この関係は誰にも言っちゃいけないと思って。けど。

「お……おい、春澤」

ヒックヒックと、ついに嗚咽をあげて泣き出してしまった私に、木下くんが焦った様子で声を掛ける。

「ゴメン、泣かせるつもりじゃなかったんだ。ただ、俺も本気だったから。あんな態度とられてすごく悔しかったんだよ」

とても困ってしまった様子で木下くんはキョロキョロと焦りながら、自分のスーツからハンカチを取り出し手を伸ばして私の濡れた頬をぎこちなく拭ってくれた。

そんな彼の優しさに、一層罪悪感が募る。

 
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