ベナレスからの手紙

包が浦

あのころはまだ広場がたくさんあって。BB弾やペンシルロケット。鉄ごま、ぱっちん
等でよく遊んでいた。隣町とのけんかで落とし穴をよく掘ったが、今思えばがれきや
溶けたガラス瓶などいくらでも出てきた。近くに半分崩れたままの大きな教会があって
そのがれきのなかは格好の隠れ家だった。ある日ウィーン少年合唱団がやってきて
びっくりしたこともある。

その後中高一貫教育の私立高に高祖と若林と高瀬が受かって福田は落ちた。それでも
彼は高校の時編入してきた。男子校で広島一の進学校だ。6年分を5年でやりあげて
高3では志望校別に徹底受験勉強だった。その中中三の夏休み児玉が音頭をとって
同窓会、宮島の包みが浦に海水浴に行った。柴山杏子ももちろん来ていた。

女どものまばゆいばかりの健康美に男たちはたじたじとなった。ずっと気には
なっていたがとてもしゃべれる状況でも雰囲気でもない。視線を送ることさえ
はばかられる、そんな感じ。女どもは女どもで団子になってはしゃいでいる。
なんとも無性に腹立たしい夏の思い出であった。
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