面倒くさがりの恋愛
 ……なんて言うか。

「少しは遠慮しよう? 生嶋さん、遠慮が無さすぎると思う」

 思えば、最初から遠慮はされていない気がする。

 言葉だけの遠慮が、微かにあっただけ。

「いやー。紗理奈さんから良いこと聞けたし」

「紗理奈から?」

「ついでに思いきり殴られたけど」

「え!?」

「君、言うことが裏腹の甘えん坊の強がりなんだって?」

「そんなことはありません。それは紗理奈の勘違いで……」

 どさりとどこかに下ろされて、車の中だと気がついた。

 シートベルトをつけられて、瞬きをする。

「デートしよう」

「え。あの……」

 言いかけたら、ドアを閉められた。

 慣れない車の慣れない匂い。微かに煙草の臭いもする。

 運転席が開いて、生嶋さんが乗り込んできた。

「生嶋さん……どうしたの?」

「何が?」

「何だか急にアクティブに……」

「急でもないだろう。俺がブレーキかけたのは一度だけだし」

「…………」

 それは、あれだろうか。先日のキスの事を言っているんでしょうか。

「でもねぇ……突き飛ばされて良かったよ」

「え……」

「あれで嫌がられなかったら、困った事態になるじゃないか」

「どういう……?」

 エンジンをかけながら、生嶋さんは微笑んだ。

「何が悲しくて、好きな女を割りきって抱かないといけないんだよ」

 笑顔だけど、不機嫌そうな台詞を朗らかに言って、生嶋さんは車を出す。

 その横顔を見て思う。

 朗らかに不機嫌そうな顔をしたり、逆に朗らかに不服を言ったり……案外、器用な気もするんだけど。

「七海ちゃん」

「はい……?」

「おっさんの本気を舐めたら、痛い目見るから気を付けないとね」

「…………」

 それは……なんと言うか。

「絶対に生嶋さんの言う台詞じゃないと思います」

 そう言ったら笑われた。









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