クローバー♧ハート - 愛する者のために -
生意気な……でも硬い人参は五歳児の悠にとっては、なかなか切れない強者。
包丁の背を抑えながら切る姿を横目に、指を切らないか一人ハラハラしっぱなし。
久しぶりに二人で立つキッチンは、ハラハラしつつも
いつもよりも楽しい時間となった。
「よーし、出来た」
「……作り過ぎじゃない?」
大皿に盛りつけたソレを見て、呆れたように溜息をつく悠。
まぁ、普段より張り切り過ぎて多く作り過ぎたかも。
でもいいんだ。これには訳があるから。
「いいの。一ノ瀬センセにも持って行くんだから」
「イチにぃに?」
不思議そうに首を傾げる。
悠は昨日の私たちの話を知らなくて当たり前。
だって熱を出して、魘されていたんだから。