20億光年の孤独sideアキ

イオ


「何をなさっているんですか?」


講堂のすぐ横には大きなカヤキの木があった
一人の男がその木の日陰で休んでいる

いくつだろう

ボサボサで猫っ毛の髪に
よれよれの白衣

大きすぎるであろうジャージをはいている

60歳のおじいちゃんにも見えるが
やたら背が高いようだ

「何をしてるかといえば、そうだな
、呼吸をしている」


振り向いたその顔を見て驚いた

思っているよりもずっと若い
それに知的な目をしている

多分30過ぎくらい…

「私のことバカにしてるんですか?」

「僕は正しく、キミの質問に答えただけだよ
では、僕も問うよ
キミは今何をしている?」


「…宇宙空間のスペースシャトルの中で紙ひこうきを飛ばしたらどうなりますか?」

「…キミは僕の質問には答えないんだね

僕は答えたのにね」

「きっと、貴方は
私の質問の答えを知らないんでしょう?」

私は長い髪をかきあげた


「僕のこと、しってる?」
「知ってますよ、理学部の進藤先生ですよね

変人で天才だって有名ですよ

話たのは始めてですけど…」

「僕はただ真面目なだけだよ

それに僕はキミを知らない、知らないキミの質問に答えたのに
僕を知ってるキミが僕の質問に答えないのは
アンフェアだ
そうだろう?」
「それ、私の名前が知りたいってことですか?ナンパですね?」
「キミには悪いが
僕は髪の長い女性にはもう懲り懲りなんだ」


進藤先生は眼鏡をかけ直す

私はその様子をただ上からじっと見る

「私は学生、貴方は先生

質問に答える義務が貴方にあります」

「キミみたいな子のことを
何ていうか知ってるかい?
パーマンの妹っていうんだよ」

「パーマン?先生、時代がちがいますよ」

「キミがパーマンの妹を知らなくても
本を読む子なら分かるよ

キミは読書をしないのだろうね」


「ミステリは読まないんです
私はハードボイルドが好きなんで」


私は進藤先生に背を向けて講堂目がけて
歩いた

どうやら、先生は私のことを侮っていたみたい

20歳の女子大生を馬鹿にしないでほしい

あーゆう人が結婚したら
まさに見本みたいな亭主関白になるんだろいな

そういえば、進藤先生ってまだ若いし独身かな?
結婚出来ないだろうな、あの性格じゃね


私は講堂の扉を開けた
< 2 / 7 >

この作品をシェア

pagetop