思い出してはいけないこと(仮)加筆修正進行中
お屋敷内は、思っていた以上に広く、入ってすぐのホールには高い天井、そしてきらきらと光るシャンデリアが吊るされている。
少し前を歩く男の子の服装も、私のワンピースなんかよりきちっとした身なりで、まるでおぼっちゃんのようだった。
段数のある階段を上り、広く長い廊下を手を引かれながら歩いていくと、さっき男の子が居た、奥から2番目の部屋に連れられた。
「ねえ、お父さんやお母さんはいないの?」
「いるよ。でも、お仕事中で今ここにはいないんだ。お兄ちゃんも何かこそこそと僕に内緒で遊んでるみたいだし」
「そうなんだ」
「あ、名前はなんていうの?」
名前を聞くのを忘れていたと思って、尋ねた。
「笹野透。君は?」
「凪宮優那」
「じゃあ優那ちゃんだね」
「とおるくん?」
嫌いな海から逃げて、ここへやってきたけど、置いてきちゃったなぁ。
誰……を?
「優那ちゃん、急に誘ってごめんね。優那ちゃんこそお父さんやお母さんと来てるんでしょ?大丈夫なの?」
「うん。お父さんとお母さんに見つかったら、また海に行かなくちゃいいけないからいいの」
「海が嫌いなの?」
「嫌い」
「どうして?」
「×××から」
記憶の中の自分は、しっかりと言葉を発しているはずなのに、よく聞き取れない。
なんて言ったの?
どうして、嫌いなの?
教えてはくれなかった。