最期
そんな父が、突然亡くなった。


あまりに突然で、涙も出なかった。


それは母も弟達も同じで、葬儀の準備に翻弄され、泣いてる暇なんかない。


病院以外で亡くなると、司法解剖しなくてはならないってことは、この時はじめて知った。


風呂場で亡くなった父の死因。


――心筋梗塞


心臓が止まって時間が経っていたのに、湯船に浸かっていたせいか、頬には赤みがさしていたと母に聞かされた。


あまりにも早い父の死は、しばらく実感がわかなくて……


通夜も告別式も、ひっそりと家族葬で見送った。


骨壺に入った骨とその粉。


糖尿病を患っていたせいか、普通の人より量が少ない。


四十九日の納骨まで、この骨壺は実家にしばし留まることになった。


母は一人になり、骨になった父と対話する。


私は母が心配で、しばらく実家に泊まった方がいいんじゃないかと申し出た。


けれど母の返事はノー。


あなたにはあなたの家族があるんだからと……


まだ小さな娘があなたの帰りを待ってるんだからと……


母はそう言って、私に自分の家に帰るよう促した。

< 3 / 17 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop