猫とカフェ

第2話

明るいチャ―ちゃんに迎えられ、戸惑いながら受け答えをしている妹。
私が今まで教えて貰った事を説明し、妹には特にハーブの育て方や、スイーツの分量などを把握しておいてほしかったので、私から色々説明をしていった。
妹は几帳面な性格なので、妹用に渡しておいたノートに私以上に書き込みをしながら真剣に聞いてくれた。多分妹はハーブもきちんと整列して綺麗に植えたり私だけでは気かつかない所に色々着目してくれるはずである。
事実、質問をされてあ!そこ気づいてなかった。という事がいくつか出てきて、チャ―ちゃんに質問をしに行ったくらいだ。
「妹さんは慎重な性格なんじゃね~お姉ちゃんも心強いね~」
妹は几帳面だし、きちんとしているし、人にかなり気を使えタイプで私には真似出来ない事が多々ある。その反面人は良くて優しいのに、人見知りだったりするので誤解も招きやすい。人に教える事が苦手で、教えるより自分でやってしまうタイプだ。私は比較的社交的な方なので、お互いをカバーしていくにはぴったりなパートナーだと思う。
今日だけの説明でノートがもう終わろうとしているのを見て、何をそこまで書いているんだろうと不思議に思いながらもう一冊ノートを渡した。
「そろそろお茶にしよ~や~」
チャ―ちゃんに声をかけられ、妹はテーブルに腰を掛けて待っていたが私はチャ―ちゃんを手伝っていると、そわそわして落ち着かないようだ。自分も何か手伝わなくていいの?な顔をしている。
「大丈夫だよ。もう終わったし」
チャ―ちゃんお得意のスイーツを初めて口にした妹はかなり驚いていた。
「ホントこれ美味しいです…」
みるみる食べて行く妹を見ていると私まで嬉しくなった。
私もチャ―ちゃんの美味しいスイーツを一度妹にも食べさせてあげたかったので、ようやく実現できてなおかつ妹も喜んでくれている。
「ね!ホント美味しいでしょ」
と言いながら少し誇らしい気分になる。
楽しいティータイムのメンバーの中にやはりフェスタは今日もいない。
チャ―ちゃんのお手製のスイーツを堪能した所で、又私から妹への説明を続けた。教える事によって自分での理解も更に深まり私にとってもいい勉強になっている。妹は相変わらずカリカリ音を立てながら必死にノートに書く、質問をするを繰り返していた。

チャ―ちゃんがたまに顔を出して様子を見に来てくれるので、その際に妹も色々質問をしていたが妹もチャ―ちゃんが聞きやすい人だという事に気づいたんだと思った。私以上に人見知りな妹がここまで色々話をしている所を見るのも初めてだった。夕方になり、フェスタが戻って来ると帰ろうという合図になっているのが最近の日課のようになっていた。
支度をし、いつものように何度もチャ―ちゃんにお礼を言うと私の家の台所に帰った。
「お疲れ様」
妹にそう声をかけると、疲れもあるんだろうけど楽しそうな表情で
「色んな事があったけど、今日はワクワクした。有難うね。明日もよろしくね」
を帰って行った。
「ホラな。やっぱりあんたに伝えてもろうて正解やったやろ」
「う…ん」
確かに結果上手くはいったけど。。正解かどうかはよく分からない。
「明日は…チャ―ちゃんの所へ行く最後の日や。気合入れて復習しいや」
「え…」
思っていた日がいよいよ来たのだ。
楽しかった分、チャ―ちゃんとのお別れはとても辛いし、師匠なんだけど、友達みたいで私の心の支えとなってくれていた大好きな存在だ。
覚悟はしていたがいざその日がくると…なんとも寂しい気持ちでいっぱいになる。もう…きっと会えない。自分でも顔が曇って行くのがわかる…
シャワーを済ませ寝る準備をするが、その日はなかなか眠りにつく事が出来なかった。朝にフェスタの鳴き声と共に目を覚ますと、机の引き出しの二つのちいさな箱をバックに入れた。
妹もそのタイミングで到着し、テーブルの前で待っている。
少し複雑な気分だが、チャ―ちゃんの前で哀しそうな顔は似合わない!
チャ―ちゃんの部屋をノックし、いつもの明るい声が聞こえた。
「え~よ~入って」
今日もチャ―ちゃんは軽い朝食の準備をしてくれていた。
それを見た妹はちょっと感動しているようにも見える。
そうだよね…私達の朝なんて自分でトーストを焼いて終わりだったからこんな朝ご飯が出てきたらという憧れが見の前にあるんだもんね。
「いただきます」
と言った後の妹の目もキラキラしている。
朝食に大満足した妹と私は、気合を入れて本番さながらにスイーツ作りに取り組んだ。妹はの見込みが早かったので協力をしながらいままで教わったスイーツがどんどん完成していった。

一人で試作品を作っていた時よりずいぶん早いし、協力者の有難さが良く分かったひでもあった。出来あがった物を冷蔵庫に入れている間に、妹と二人で庭の手入れをしたり、飲み物の下準備をしてたり作ったスイーツについての作業についてを話したり、充実した時間が過ぎて行った。
出来あがった物をチャ―ちゃんに試食してもらう事にし、椅子に座って待っていた。その間もハーブをこんな風に保管しようとかこうやった方が作業が早くなるよね等の案も次々とお互いに出し合っていた。
「あら…話がいい方向に盛り上げってるみたいやね~」
チャ―ちゃんが嬉しそうに椅子に座り出来あがったスイーツを見つめていた。
「いただきます」
出来あがった物を少しずつ食べ終わったあと
「あんたらも食べてみんさい」
と勧めてきたので、食べてみる事にした。
「ほんと…美味しいわ~コレ」
笑みを浮かべながら食べてくれているチャ―ちゃんを見ているのも嬉しかったが二人で協力して作ったスイーツはいつもに比べて更に美味しい気がした。
部屋に戻っていくチャ―ちゃんの後を追って
「ちょっといいですか…」
と声をかけた。
「どうしたん?あらたまって…」
「あの…今日ここへ来る最後の日だと聞いて…せめてものお礼にとこれを」
バックから小さな箱を取り出すとチャ―ちゃんに渡した。
「私に?開けてみていい?」
うなずいた私を見てチャ―ちゃんは包みを開け始めた。
「あら可愛い」
チャ―ちゃんからすると大したものではないのは分かっていたが、今できる精一杯の気持ちの印だ。
「大した物じゃなくてホント申し訳ないのですが私今までこんなにお世話になった事なかったし、こんなに楽しい時間も過ごせた事なかったし、こんなに優しく接して貰えた事もほんとなくて……」
言葉を続けたかったが、自然に涙がボロボロ出てきて言葉にならなかった。
「ほんと……有難うござい…ました」
いい歳をしてこんなにボロボロ泣いてしまっている自分に恥ずかしい事はこの上ないが、涙がどうしても止まってくれない。
「何も言わんでええんよ。私も楽しかったんじゃけえ。あんたの気持ちは毎日のあんたの行動で十分伝わってきとったよ。真剣にいつも頑張っとったじゃろ?
私もすごい楽しかったんよ。可愛い妹が出来たみたいだった」
チャ―ちゃんの言葉に更に涙が止まらなくなっていた。
二度と会えなくなる事が寂しくてやりきれない。

「ちょっと、待っときんさい」
チャ―ちゃんは部屋に入り戻ってくると私の手に何かを握らせた。
手を開いて見ると、綺麗な一粒石のネックレスだった。
「え…これダイヤじゃないんですか?」
「綺麗じゃろ?」
「いや…綺麗というか…こんな高価な物頂けません」
泣いてはいるが、そういう所は冷静な大人である。
「これはねラウンドブリリアンカットのダイヤモンドなんだけど、ネックレスの中では一番気に入ってるんよ」
「いや…あの高価ですよねこれ。素人が見ても何となく輝きが違う気がしますし。貰う事はできないです」
綺麗な石すぎて、思わず涙も止まるくらいだ。マジでこんな高そうなものは貰えない!!
「これね、石は綺麗なんだけどネックレスでしょ。私には長すぎて使えんのんよ。石だけ使って別の物にすればいいんだろうけど、何かこのままでいて欲しくて。私だと思って良かったらつけてみてくれん?」
真剣な顔で言われると、言い返す言葉も見つからずとりあえずつけてみる事にした。
「綺麗だわ…きちんとネックレスとして使ってもらって喜んどるわ~」
今は鏡がないので自分の姿は見れないが、多分私の顔は相当引きつってるにちがいない。ただ…つけていると何となく安心感が生まれている。チャ―ちゃんのぬくもりに触れているようだ。
「私の代わりにこれをお守りにしてくれん?」
うなずくしかなかった。
「ホラ!妹さんを一人にしといたらいけんじゃろ?戻ろうや」
「あの…もう1つ頼みがあるんですけど」
「ん?どうしたん?」
私はもう1つの小さな箱をチャ―ちゃんに渡した。
「これ…もしフェスタがこちらの世界に戻ってきたら渡して貰えないでしょうか?多分…私から渡しても受け取らないでしょうけど、今回こうしてチャ―ちゃんにお会いする事ができたのもフェスタのおかげなので…一応感謝の印を渡したいと考えたんです。お揃いなので、チャ―ちゃんはイヤかもですけど…」
「フフ…あのフェスタにお礼の品を渡す人なんて初めて見たわ。預かっておくね。さあ、妹さんが一人で待ってるから行こうか」
チャ―ちゃんに遅れてトボトボと妹がいる場所に戻る。

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