きっといつか
第一章
「あのね、ずっと前から言おうと思ってたんだけど…」

そこまで言うとキミは何処かに行ってしまった。
私から全力で逃げるその後ろ姿は私の事を心の底から嫌っているようにさえ見えた。
せっかくのいいムードを台無しにするような物凄いスピードで走り去っていった彼こそが私の好きな人。

そう今、この瞬間に告白しようとしました。が、呆気なく終わってしまいました。
切ないというよりも正直腹立たしい気分の今、何処にこの気持ちをぶつければいいのだろうか。
ただただ近くの教壇の上にもたれ掛かることしか出来ない。
頑張って可愛くなる為にダイエットもしたしメイクも勉強した。
それなのにあの逃げ方…
「くそぉうっ!!」
大きな声を出してしっかりと自分の力だけで立って仁王立ちをしてみたものの、目にはじんわりと暖かいものが込み上げてきた。
告白すらさせてくれないなんて…もう恋なんてしたくない、それが正直な気持ちだ。

「あれ、どうしたの」
ぼやけた視界の隅にちらっと影が見えたのは幻覚ではなかったようだった。
その優しい言葉にホッとした瞬間、私の涙腺が崩壊した。
「えっ、えっ!?」
そりゃそうだ。
夕方の誰もいない教室でこんな女子が一人で、しかも教壇の前で仁王立ちをしていた奴が泣き始めるなんて怖すぎる。
客観的に考えると気持ち悪い。
でも声をかけてくれたその人は何も言わずに、何も聞かずにただ同じ時間を過ごしてくれていた。

何分位泣いたのだろう。
静かに顔を上げるとそこには見慣れない男性がいた。
泣きすぎて頭がガンガンするものの、お礼を言おうと口を開く。
「あ、あの…。薬…持ってませんか…?」
「え、本当に大丈夫?鎮痛剤でいい?」
嗚呼情けない。本当に申し訳ない…。
初対面で泣くだけでも苛つくであろうに、この男性は本当に優しい人なんだと心から思った。
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