Seventh Heaven
気付くと、わたしは教室の前の廊下にいた。
2年B組。
わたしの、クラスだ。
「ここは、学校?いつの間に?」
教室から、何やら声が聞こえる。
「ほらっ、おとなしく、私の言う事聞きなさいよ!」
聞き覚えのある声。
わたしは、教室のドアのガラス部分に顔を近づけた。
「七咲さん、あなたみたいなクズは生きているだけで罪なのよ!」
教室内では、今まさに七咲さんがいじめられている最中だった。
いじめているのは、クラスを仕切っている衿奈とその取り巻き達。
衿奈は、この学校の理事長の孫で、誰も彼女に逆らう事はできない。
取り巻きの連中達も、いつ、その矛先が自分に向けられるかという恐怖に怯えながら、いじめに加担せざるを得ないのである。
「はやくしろよ!」
フードをかぶったまま、衿奈の足元に顔を近づける七咲さん。
「私に忠誠を誓うなら、靴舐めなさいよ!」
何度となく、目の当たりにした状況。
七咲さんは、登校を始めて、またすぐにいじめに遭ってしまったのか。
私が、「学校に行こう」などと、安易に言ったせいで、また、七咲さんを苦しめる事になってしまったのか?
助ける?
いや、だめだ。
そんな事をすれば、わたしがいじめの対象になってしまう。
先生を呼ぶ?
いや、だめだ。
それも、すぐに誰が報告したかなんてわかってしまう。
それが、わたしだとわかれば、わたしがいじめの対象になってしまう。
わたしは、助けに入る勇気を持てずにいた。
これまでのわたしなら、見て見ぬふりをして、この場を静かに立ち去っていただろう。
けれど、何もできずに、ただそれを見ているだけでは、これまでと何も変わらない。
わたしは、最低だ。
やっぱり、自分が一番大事なんだ。
他人を犠牲にしても、自分を守りたい。
わたしは、そんなわたしが、ずっと嫌いだった。
でも、それじゃだめなんだ。
わたしは、変わりたい。
変わらなくちゃいけないんだ。
でも、やっぱり、わたしには無理だ。
しかし、この日は何かが違っている。
何が違っているのかはわからないけれど、たしかに今までとは何かが違う。
わたしは、違和感を覚えずにはいられない。
いま、このドアを開けるべきなのか?
「ぐっ!」
七咲さん!
衿奈に顔を強く蹴られ、七咲さんは倒れこんだ。
その口からは、血を流している。
わたしは、思わず、ドアに手をかける。
しかし、恐怖に足がすくんで、ドアを開ける事ができない。
わたしも同じ目に合う。
「七咲さん、ほら、もっと舐めてくださいよ。ふふふ!」
衿奈は、うずくまる七咲さんの頭に足を置いて笑う。
あまりにも酷い衿奈の行為を、取り巻き達も直視できずに顔を背けている。
「七咲さん、あなたの鼻血で靴汚れちゃったじゃない」
ひどすぎる…。
七咲さん…。
わたしの胸に怒りがこみ上げる。
衿奈という絶対的な存在。
そんなものが、この世界で許される不条理への怒り。
行こう。
わたしは、決意を固めた。
止めさせなくては。
わたしは、変わるんだ。
そんな時だった。
七咲さんは、なにやら、パーカーのポケットをまさぐり始めたのである。
その目付きは、恐ろしいまでに狂気に満ちている。
まさか、七咲さんが手にしようとしているのは…。
七咲さんは、衿奈を殺す気だ!
「だめ!」
わたしは、ドアを開けていた。
2年B組。
わたしの、クラスだ。
「ここは、学校?いつの間に?」
教室から、何やら声が聞こえる。
「ほらっ、おとなしく、私の言う事聞きなさいよ!」
聞き覚えのある声。
わたしは、教室のドアのガラス部分に顔を近づけた。
「七咲さん、あなたみたいなクズは生きているだけで罪なのよ!」
教室内では、今まさに七咲さんがいじめられている最中だった。
いじめているのは、クラスを仕切っている衿奈とその取り巻き達。
衿奈は、この学校の理事長の孫で、誰も彼女に逆らう事はできない。
取り巻きの連中達も、いつ、その矛先が自分に向けられるかという恐怖に怯えながら、いじめに加担せざるを得ないのである。
「はやくしろよ!」
フードをかぶったまま、衿奈の足元に顔を近づける七咲さん。
「私に忠誠を誓うなら、靴舐めなさいよ!」
何度となく、目の当たりにした状況。
七咲さんは、登校を始めて、またすぐにいじめに遭ってしまったのか。
私が、「学校に行こう」などと、安易に言ったせいで、また、七咲さんを苦しめる事になってしまったのか?
助ける?
いや、だめだ。
そんな事をすれば、わたしがいじめの対象になってしまう。
先生を呼ぶ?
いや、だめだ。
それも、すぐに誰が報告したかなんてわかってしまう。
それが、わたしだとわかれば、わたしがいじめの対象になってしまう。
わたしは、助けに入る勇気を持てずにいた。
これまでのわたしなら、見て見ぬふりをして、この場を静かに立ち去っていただろう。
けれど、何もできずに、ただそれを見ているだけでは、これまでと何も変わらない。
わたしは、最低だ。
やっぱり、自分が一番大事なんだ。
他人を犠牲にしても、自分を守りたい。
わたしは、そんなわたしが、ずっと嫌いだった。
でも、それじゃだめなんだ。
わたしは、変わりたい。
変わらなくちゃいけないんだ。
でも、やっぱり、わたしには無理だ。
しかし、この日は何かが違っている。
何が違っているのかはわからないけれど、たしかに今までとは何かが違う。
わたしは、違和感を覚えずにはいられない。
いま、このドアを開けるべきなのか?
「ぐっ!」
七咲さん!
衿奈に顔を強く蹴られ、七咲さんは倒れこんだ。
その口からは、血を流している。
わたしは、思わず、ドアに手をかける。
しかし、恐怖に足がすくんで、ドアを開ける事ができない。
わたしも同じ目に合う。
「七咲さん、ほら、もっと舐めてくださいよ。ふふふ!」
衿奈は、うずくまる七咲さんの頭に足を置いて笑う。
あまりにも酷い衿奈の行為を、取り巻き達も直視できずに顔を背けている。
「七咲さん、あなたの鼻血で靴汚れちゃったじゃない」
ひどすぎる…。
七咲さん…。
わたしの胸に怒りがこみ上げる。
衿奈という絶対的な存在。
そんなものが、この世界で許される不条理への怒り。
行こう。
わたしは、決意を固めた。
止めさせなくては。
わたしは、変わるんだ。
そんな時だった。
七咲さんは、なにやら、パーカーのポケットをまさぐり始めたのである。
その目付きは、恐ろしいまでに狂気に満ちている。
まさか、七咲さんが手にしようとしているのは…。
七咲さんは、衿奈を殺す気だ!
「だめ!」
わたしは、ドアを開けていた。