寵愛の姫 Ⅰ【完】





「……。」




その茉莉の言葉に叶くんは、私に増悪の目を向ける。


「っっ、」


ねぇ、どうして?


どうして、そんな冷たい目を向けるの?


「最低だな、お前。」


「……、」



……違う。



そう言い掛けて、口を噤む。



叶くんの冷たい眼差しに、もう、どんな私の言葉も届かないんだと悟った。



「もう、諦めて帰ったら?」


「……。」



嘲る茉莉に虚ろな瞳を向ける。



「天野さんは、私が慰めるから。」



勝ち誇ったような表情を浮かべる茉莉。
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