【完】俺の言うこと聞けよ。〜イジワルな彼と秘密の同居〜

樹さんの声がどこか遠くに聞こえる。


結局、すべてを知ったところで希望なんてなかった。



琉衣くんにとって沙良さんはやっぱり、

今でも大切な人なんだ…。


そして沙良さんもきっとまだ琉衣くんのことが好きで、

別れたことを後悔してる。


それがどんなに勝手な理由でも…



私は自分がバカみたいにうぬぼれてたことが、本当に恥ずかしくなった。



もし私があの時板重を崩しても、琉衣くんは私を助けたかな?


あんなふうに真っ先に、飛んできて。


嫌いになって別れたわけじゃない彼女のこと、本当に吹っ切れているのかな…?


その彼女に、まだ好きだって言われたら…



私はきっと、かなわない…。



結局沙良さんにはかなわないんだ。


元カノには…。



ただそんなことをあらためて思い知らされただけのようで…


指の先よりもずっと、

胸の奥が痛かった。


泣いても泣いても、

その痛みは取れなかった…。


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