真実の愛のカケラ
震える足で社長室を後にする。
別れることを了承したつもりはない。
だけど、もうあの場にいたくなかった。
何も言い返せない自分が惨めだし、簡単に別れるだろうという空気に耐えられなかった。


社長や会長にバレてもなんとかなるだろう、なんて考えてた自分がどれだけバカだったか思い知らされた。
拓哉が守ってくれるかも、なんて甘えてた自分にも腹が立つ。
私はそんなこと期待して良い立場じゃなかったんだ。


いずれ重荷になる日がくるのなら…。
私がいなくなることが、私の唯一できる拓哉の為になることなら…。


その足は再びオフィスへと戻りデスクを見回す。
そんなに私物も置いてないし、勝手に処分してもらって構わないか。
そして最後となるであろう椅子に座って、薄暗い中でペンを走らせた。
そして最後にその封筒に退職届と書き、それを机に置いて会社を出た。


私の能力を評価してくれたことには感謝したいけど、やっぱりこの会社に残るのは無理だ。
付き合ってたって会社で拓哉を見たら暴走しそうで自分を抑えるのに大変だったんだもん。
好きなのに一緒にいられなくて、それで手が届く距離にいられちゃったら、間違いなく暴走する。
もう抑えられない。
だから…。
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