真実の愛のカケラ
会社を見納めて駅に向かう。
夜遅いというのに、いつものこの時間よりも人通りが多い。
ふわりと何かが冷たく頬を濡らした。
ぱっと空を見上げるとひらひらと雪がちらついている。


綺麗だね、と近くを歩くカップルがイルミネーションと雪に目を輝かせながら肩を並べている。
本当なら、私も拓哉とあんな風に笑ってたのかな…。


なんか、突然のことすぎて頭がついていけてない。
現実味が無さすぎて悲しいとか寂しいとかいう感情も湧いてこない。


今日も会食が入ってるって言ってたけど、拓哉はもうこっちに帰ってきてるのかな?
待ち合わせの約束破ったこと怒るかな?
怖そうだな。


…そっか、もう会わないんだから関係ないか。
もし電話がかかってきてもでられないように電源切っておこう…。


駅からタクシーで帰ったけど、移動中はびっくりするくらい上の空で、いつの間にかアパートの前に着いていた。
部屋に入ると忘れていた賑やかな飾りつけに迎えられる。


2人でアパートに帰ってきて、すごいでしょ?なんて話すはずだった楽しい時間が、実際には虚しさだけが充満する時間となってしまった。


画用紙で作ったメリークリスマスの文字がより一層悲しさを大きくする。
見たくなくて、メの文字を剥がして丸める。

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