真実の愛のカケラ
会社を去る…?


拓哉は今、禁句を口にした。
会社の跡継ぎの問題は経営にも大きく関わる問題で、とにかくデリケート。
たぶん、拓哉もわかった上でそれを切り札として切ってきたんだ。


重たい空気はさらに重みを増していく。


「拓哉」


初めて社長が咎めるように口を挟んだ。
何か言いたいことがあるというよりも、会長が激怒する前にこの場を穏便に済ませようという姿勢だ。
社長らしい。


そこに割って入ったのは、優雅な仕草で紅茶を一口飲んだ拓哉のお母さん。


「ちょっと見ない間に随分と変わったんじゃない?

あんなに自分の好きなように動いてた拓哉が、恋に踊らされてるなんてね。
悪くないんじゃない?」


あれ、なんだろう?
拓哉のお母さんは私たちの味方をしてくれてる?
もしかして、少しずつ話が良い方向に向かってる?
< 220 / 240 >

この作品をシェア

pagetop