真実の愛のカケラ
話終えた後、会長は懐かしい目をして言った。


「まさかあの味にもう一度会える日が来るとは思ってなかった。


若いわしは色々と諦めた。
諦めて、安全な道を通ってきた。
そしてそんな自分を正当化してきた。
違う人生を想像しても、もう手遅れじゃからの。


わかるか拓哉、それに宮野さん?
お前達を認めて幸せな姿を見せつけられては、わしは今までのわしの人生を否定することとなる。


じゃがもうよい。
孫の恋路を邪魔しておっては、天国のあの人にまたつまみ出されるわい」


会長は私たちのことを認めてくれた。
そのことは嬉しいことに違いないんだけど、私も拓哉も丁寧にお礼を述べるにとどまり、喜んでばかりではいられなかった。
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