真実の愛のカケラ
でも…。
今までタイミングがないからって言わずにきたけど、今日こそは言わなくちゃ。


車の音を聞きながら決意を固める。
よし。


「柚希」


不意に名前を耳元で呼ばれる。


気がつけば背中に温もりがあり、力強さを感じるくらい、後ろからぎゅっと抱きしめられていた。


まるで私をどこかへ逃がさないように、どんどん力がこめられていく。


「大事な話がある」


「大事な話?」


まさか拓哉も話したいことを持っていたとは。
でも、なんだろう…?


よくわからないけど、抱きしめられた腕からは緊張が伝わってきて、真面目な話なんだとは察しがつく。


「あのさ、俺…」


拓哉が何かを言いかけたその瞬間、着信を知らせる音が響いた。


「わり…」


「いいよ。
出て」


そう言うとふわっと拓哉は体を離し、申し訳なさそうに電話に出た。
< 27 / 240 >

この作品をシェア

pagetop