真実の愛のカケラ
ピリつく会議室
今日は午後から会議が入っているため、もうすぐ副社長室となる部屋から、第一会議室へと向かう。


この広い廊下も高い窓から見下ろす景色も、特別凄いと思ったことはない。
これが俺にとっての普通だから。
何一つ自分の力で手に入れたものではないけど、小さい頃からこの会社に出入りして、フレンチ料理を食べてきた俺としては、それ以外の暮らしを知らない。


大学で経営学を専攻したけど、それだけじゃもの足りずに卒業後に単身フランスへ。
色々と勉強するつもりだったが、家から解放された自由で、会社を継ぐ以外に自分のやりたいことがあるんじゃないかと思って、暫くは遊んでいた。


でも、やはりフランス料理から離れられず、本格的に継ぐことを意識し始めた。
それで日本に戻ってきた俺は、変わり者の父と厳格な祖父によって修行に出されることとなった。


一体何店舗で働かされたことか。
提供するメニューは違っても、ホールスタッフとしてやることは大体同じ。
正直飽きていた。
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