プロポーズは朝陽を浴びて
 酔っぱらい烈の目が座っている。胸の前で腕を組んで動く気配なし。

「違うよ。逃げるとかじゃなくて、ここだと時間も時間だし、内容が――」

「遠慮なんかするなよ! だいたい誰に遠慮してる? 俺様か? それともファンか?」

 ダメだ。
 烈は酔っぱらってる上に、俺様で、そして怒っている。
 おそらく、わたしとの問題を話し合うためにきたはずなのに、自分の欲望も入り交じってなんだかよくわからない会話になっている。
 烈の問いかけの答えは、どっちも。
 それにマンションの隣人にも遠慮してる。
 だけど、それをいったらますます油に火を注ぐようなものだ。

 詰め寄る烈に、すみれは黙りこむ。
 そんなすみれを見た烈が、苦虫を噛み潰したような顔をして舌打ちをした。

「もっと俺を欲しがれよ……!」

 穏やかに話しを進めていたわけではないけど、烈のほうはもう我慢の限界だったようだ。
 すみれは両手を捕まれ、体ごと壁に押さえつけられる。

「れ……っ!」

 烈の名を呼ぼうとした唇がキスで塞がれる。口を開けていた唇のなかに、強引に押し入ってくる舌が舌に絡みつく。
 壁に押さえつけられた体が烈の香りに包まれ、キスはビールの味がした。

「待って……! ここ、玄関……」

「関係ない……!」

 顔を背け、キスから逃れようとすると烈の唇が執拗に追いかけてくる。
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