麗雪神話~幻の水辺の告白~
「さあ、ペンダントを」

レインスに促され、セレイアはペンダントを虹にかざした。

その瞬間、ペンダントがまばゆい光を放った。空に架かる虹も、呼応するようにきらきらと輝きを増す。

ペンダントが熱いと感じた。いや、温かいというべきか。

何かの力が、集まってきているのがわかる。

脈動を感じられそうなくらい、まるで生きているかのように、ペンダントが熱を増していく。

やがて―――――

夜の虹が消えると、手元には見違えるほどの輝きを放つペンダントが残った。

「これで合図はばっちりだ。
天上界への扉は開く。よかったね、スノーティアス、セレイア」

喜んで声をあげるべき二人は、沈黙を返すことしかできなかった。

夜の虹のペンダントが完成してしまった。

あと一月。

別れの時は、着々と迫っていた―――……。

「…思い出をつくっておくといいよ」

セレイアにだけ聞こえる小さな声で、レインスがそう言った。

セレイアは考えてみる。

思い出………。

そんなものいらないとも、どうしてもほしいとも、セレイアには思えなかった。

ただ……

うつむくことしか、できなかった。
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