麗雪神話~幻の水辺の告白~
自然な動きではなかった。

人為的な、意思を持った動きだ。

まさかと思った時には、鋭い風の刃が皇帝に襲い掛かっていた。

大きな真空波だ。

当たれば確実に首が転がり落ちる。そして皇帝に避けるすべはなかった。

―まさかこんな形で皇帝の野望が阻止されようとは。

サラマスは皇帝の命が散る瞬間を待って彼を凝視した。

しかし。

今にも真空波が皇帝の首を落とすと言うところで、黒々とした光のシールドのようなものが現れ、彼を守ってしまった。

咄嗟にシールドを出現させたのは、ヴェインに違いない。

そして真空波を放ったのは間違いなく……。

「くっ、仕留め損ねたわ」

木の影から現れた二つの人影のうちのひとつに、思いっきり見覚えがあった。

「シルフェ!!」

そう、たおやかな女性の姿をした、風の神シルフェードだった。

彼女の姿を見つけた瞬間、サラマスは妙な感情の動きを味わった。

離れていたのはたった二月。それなのにもう何年も、何十年も、会っていなかったような気がして、懐かしかった。

そして、一瞬だけれど、胸がきゅっと締め付けられるような、不思議な感情がサラマスの中をよぎった。

だが今は、そんなことを気にしている場合ではない。
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