麗雪神話~幻の水辺の告白~
第四章 師の言葉

シルフェの体調は、ボリスの薬のおかげか、二、三日ですっかりよくなった。

だが、風の力はやはりまだ戻っていない。

起きて歩けるようになったのを機に、シルフェはこの場所のことをいろいろと教わった。

ここはボリスが、王位を手に入れる日までの拠点としている小屋のひとつで、ジャングルの奥にひっそりと建てられたものだということ。

外には井戸も掘ってあり、地下蔵に食料もたっぷり貯蔵してあることなどだ。

「ここで普段何をしているの」

シルフェが聞くと、王位を手に入れるために、やることは山ほどあるのだとか。

シルフェが見たところによると、薪を割ったり水を汲んだり料理をしたりといった生活のためのことが主で、あとはあの本がたくさんある部屋にこもっているという印象があった。

その生活の仕方で、何がどう転べば、皇帝になることができるのやら、さっぱり理解できない。

シルフェは何度か隙を見て逃げ出そうとしてみたが、広がる深いジャングルを目の当たりにすると、断念せざるを得なかった。道の分からぬシルフェは、空でも飛ばない限り、このジャングルから生きて出るのは不可能だと思った。

仲間たちと連絡も取れぬことに焦りはあるが、とりあえずボリスにシルフェを害する意思がないのなら、ここは大人しくして様子を見ようと思っていた。
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