Pallet
激しい雨音に混じって、バシャバシャとなにかが近付いてくる音がする。
その音は、段々と大きくなって待合室に飛び込んできた。

「あ〜、最悪だ」

びちょびちょに濡れている彼は、そう言いながらワカメのように張り付いている髪の毛をかき上げる。
そして、犬が水を飛ばすときのようにブルブルと頭を振った。

水滴が飛んでくる。

「ちょ、ちょっと!!」

私がそう言うと、人が居ることに気付いた彼がこちらを向いた。

「あっ、すいま……って、摩耶じゃん。あ〜あ、謝って損した」

声を聞いたときにそうではないかと思ってたけど、その顔は案の定“浅原 春都”だった。

「損したって、あんた謝ってないじゃない」

なんて言いながら、心の中は舞い上がっていた。
春都は、私の好きな人だから。

鮎川 摩耶
浅原 春都

出席番号の近い私達はこの三年間、毎年春になると隣の席になり一緒に日直をやってきた。

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