アサガオを君へ
私は夏樹を見上げた。


相変わらず無表情だ。


だけど、私にはわかる。


夏樹は少しだけ傷付いてる。


でもそれ以上に。


私は夏樹の袖を引っ張った。


「何で、嬉しそうなの?」


夏樹はビクッとしてから、目線を下に落とした。


あ、嘘つくんだ。


瞬時に私は察知した。


「久しぶりに会えたから」


「…そう」


目線を下に落とすのは、嘘をつくときの夏樹の癖だ。


私はそれ以上深くは聞かなかった。


夏樹も何も言わずクルッと振り返って歩き出す。


私は何も言わずに後をついていった。
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