アサガオを君へ
叔父さんが私に言ってくれる一言一言が、夏樹が私にくれる言葉とかぶる。


私は叔父さんの頬から手を離す。


叔父さんも私の頬から手を離した。


立ち上がり、机の上に置いてあった4つのお弁当箱を指差す。


「これ、ちゃんと忘れず持ってきてね」


叔父さんはコクッと頷いた。


私は叔父さんの返事を見届けると、カバンを持って玄関に向かい、靴を履く。


そして玄関のドアを少しだけ開けたとき。


「心」


私は振り返らなかった。


振り返るわけ無い。


少し開いたドアから覗く、見慣れた靴から目をそらすはずなんて無い。


たくさん探すのに苦労した廃盤の靴。


叔父さんにも、その靴が見えたらしく。


後ろでクスッと笑い声が聞こえた。
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