かぐやの月
白虎はさらに話を続けた。


村の者は始めかぐやを人と癒しの能力を与えられた神の愛する子として崇めたが、次第にかぐやに触れた後、治癒するどころか命を落とすものが現れたので騒ぎになった。


人と死をもたらす魔物かまだ知らぬ種族との間に出来た半人として誰も近づかなくなっていったという。


かぐやはその話に胸を締め付けられる思いがした。


その時、白虎がポンッとかぐやの肩に手を置いたので、顔を上げた。


「しかし、おまえはかぐやだ」


かぐやがはっと顔を上げた。


「俺たちの仲間、かぐやだ」


白虎は普段静かに、落ち着いた声で話す。


思慮深いのか、性格なのか一言一言かみ締めるように。


とくに、大切なことを話すときはそれが際立つ。


だからだろうか、彼の言葉に深みを感じるのだ。


「仲間・・・そんな風に言ってくれる人がいるのなら、他の人にどういわれようとどうでもいいいね」


「そっ、気にするな。んでもって、銀司は太陽だな。ギンッギン照らしてくるの真夏の太陽」


「わかるわかる。でも、月と太陽は一緒にはいられない存在だよね」


「そういえば銀司、青い顔してたな。近くにいた奴らが不用意に声かけるもんだから、とばっちりくってぶっ飛ばされてた」


「それって・・・」


「ま、かぐやのことだろうと思ってたけ。どなんかあった?」


「私が記憶をなくす前に、そのぉ・・・口づけしたらしいんだよね、銀ちゃんと。でも全く覚えてなくて」


白虎は呆気にとられた。


かぐやが忘れたことに対してではない、むしろ記憶喪失になったのだから忘れていても責められるべきことではない。


問題は銀司の方だ。


銀司は、かぐらを女として見るようになる前は数え切れないくらいの女とそういうことをしてきた。


だから、銀司のほうがいつも忘れて女につつかれる方だったのが今はどうだ。

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