かぐやの月
そして、里の者が漆黒の炎の話を聞き、それを消すことができる唯一の存在が、かぐやだということが分かれば里の者たちはかぐやを無理にでも漆黒の炎へ連れていくよう騒ぎ出すであろう。


また、かぐやの存在を知った他の里の者たちが、明星の里を襲撃し、かぐやを差し出すよう求めてくるだろう。


そのため、かぐやに里からいなくなるよう促した。


かぐやは恨み言の一つも残すことなく、ただ一人、神隠しにあったかのようにいなっくなったが、一年後、狂ったようにかぐやを探し続けた銀司と白虎によって里近くの森で意識不明のまま倒れているところを発見されたのだ。







「私は確かに漆黒の炎を見つけたのです。月の精霊王の怒りを鎮めるため、父と母の魂を救うため、里やほかのすべての種族を魔物の脅威から解放させるために身を投じる覚悟はできていました」


「そなた、記憶が戻ったか」


かぐやは静かに頷いた。



土人族に襲われ、締め付けられて意識をが薄れかけたときから少しずつ記憶の断片が戻ってきていた。


「でも、そこに酷く大きくて強大な力を持つ魔物が現れて、私が炎に入るのを許さず、戦いました。そして、気が付いたときには意識を失いここへ帰ってきていた」


「そうであったか」


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