先生、私じゃダメですか?
振り向くと、
そこに立っていたのはあの人だった。
私の好きな人。
「二人とも傘を持ってないの? 」
両手に
たくさんの紙袋を持っている渋谷。
「はい」
「じゃあ貸してあげるよ」
渋谷はカバンから傘を出し、
私にそれを向けた。
「えっ……でもーー 」
「先生、いんですか⁉︎ ありがとうございます」
私が迷っていると、
佐伯さんはそう言い
笑顔で渋谷の傘を受け取った。
「いえいえ」
渋谷も笑顔で言う。
笑いあっている二人を見て、
少し胸が痛んだ。
わかってる。
佐伯さんはただ、渋谷を先生として接しているぐらい。
けど、ヤキモチは消えない。
渋谷を独り占めしたい
なんて思っちゃったりして……。
「じゃあ、集合時間に遅れないように気をつけてね」
渋谷はそう言い、
カバンからもう一つ傘を出し歩いていった。