優歌-gental song-

歌-song-



どくん、どくん。



鳴りやまない心臓の鼓動は、決して甘いものじゃない。





絶望の色を含んで、




もっと苦く





もっと鋭く








ぼくを、貫く。














バン、と荒々しく扉を開け放って、飛び出した空の下。


屋上へ続く扉にかかっていた鍵は古く、実はその役目を果たしていないことはずっと前から分かっていて、僕はよく屋上へ通っている。


ぼくはフェンスの前に座り込み、ぼうっと空を眺めた。


夕暮れ時の空に流れる雲は橙色のような、桃色のような、どっち付かずの淡い色をしていた。


ぼくはすう、と息を吸う。



吐き出すと、それは旋律になっていた。



いつか歌ったことのある歌。



穏やかに、ゆっくりと流れる雲。


刻々と変化していく空の色。


もう少しで地平線に消える太陽。



ぼくはそれを眺めながら、優歌さんを思い出していた。

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