tear/skill
01
爽やかな夏空
怠いくらいの快晴
今日も私の隣にはあいつがいる
手をつないで歩いてた····はずだった
突然の雷雨
夏空はすぐに裏切る
私の心はバラバラだ
最初、なにがおこったかわからなかった
隣を歩いていたあいつがいない
あいつがいない
あいつが···いない??
なんで
なんで
なんで
なんで
誰か
誰か
誰か
教えて!!!!
冷静になったのは病院
刑事さんがあれやこれや言っていた
車が突っ込んだのなんだあんだ
あんた気づかなかったのかい?
異常だよあんた
傷つくな
なんであいつを待たずしてとびだしたんだろう
「普通じゃねぇなおまえ」
えっ?
声?どこから?
辺りをキョロキョロ伺う
松葉杖をついてベンチに座る青年
「かっこいい」
「はあ?」
そりゃそうだよね、いきなりかっこいいって言われてもねぇ
「ごめんなさい」
「つーか彼氏?
待たないの?」
「彼氏じゃないし友達
海に行こうとしてたら車が突っ込んできてって笑えないよね」
「おまえなんでそんな軽いの?」
「えっ···」
だって友達だけど他人だし
それに私にしたらどうでもよかった
むしろ私じゃなくてよかった
って違う違う
「へぇけっこう腹黒いじゃんあんた」
「···違う」
「なにが?本当は自分じゃなくてよかったって内心思ってんだろ?
んで挙げ句の果てには助けてくれた恩人かもしれない友達なんてどうでもいいって最低な人間だなおまえ」
「違う違う」
「さてと戻るかな
じゃな」
「名前きかせて」
「知りたい?」
わざと顔を近づけてきて訊く
「うっ···うん」
相手が名乗るより早く看護士さんが呼ぶ
「ここにいたの悠真くん
そろそろ検査の時間だから部屋に戻って
あなたもよ」
「悠真···」
私は何度も反芻した
忘れないように
屋内に戻って部屋に案内された
沢山の計器に囲まれてまだ眠っていた
改めて事の重大さに気づかされながら呟いた言葉は意外にも軽かった
「ごめんね」
ごめんねじゃないけど浮かばない言葉
しばらく病室にいたがすぐに両親に追い出されてしまった
帰ろう···
廊下をとぼとぼ歩いていると誰かに声をかけられた
「おい」
悠真?
「悠真」
なんで私、嬉しそうなの
「ずいぶん機嫌がいいな
友達が死んだからか?」
縁起でもない
なんでこの人はさっきからそんな言葉ばかりぶつけてくるんだろう
「不謹慎」
「でもおまえはそう思ってる」
「思ってない」
悠真は私の横をすり抜けていく
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