独りの世界に囚われた女性の場合
 気がついたら昼下がり、携帯電話の無機質で何の飾り気もない画面がそれを教えてくれた。
 テーブルに伏せたかたちで置かれている目覚まし時計に、恐る恐る手を伸ばしてみる。
 時計が示している時間は八時三十六分。午前と午後の表示はついてないが、その時刻が示すのは午前の時刻である。
 この時計は、あの時から時を刻むことはなく、止まったままだ。それは、私が決めたこと。
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