独りの世界に囚われた女性の場合

 ただ日々の繰り返し。
 人間は死ぬために生きているとか、死ぬとか、生きるとか、そんな答えがでないようなことは、もう考えもしない。
 考えるのは、あの人の、彼のことばかり。
 だけど、いとおしい、狂おしいほど好きな彼も、もうこの世界のどこにも繋がってはいない。
 私と彼は、もう、同じ空間、同じ世界にはいない。それが堪らなくもどかしいが、私には、いや、臆病者の私には、この状況を変えるための行動なんてできはしなかった。
 突然の苛立ちを部屋の隅にある机に、小さなクッションを投げるというかたちでぶつける。すると、当の昔に、その用途を失ったその机の上から無機質な音をたて、一つの写真立てが、かつての私達の記憶が落ちた。
 
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