線香花火

2

彼女と歩いた道をひとりで歩いていた。

飲食店街を通り抜けて……ホテル街を過ぎたところの角を曲がったら……。

ほら!! 神社が!!

……ない……!?

このホテルやなかったんかな?

近辺をフラフラしたけれど、神社はみつからなかった。近くの案内図にも神社の表示はなかった。

どっと疲れて家に帰ると、母さんがクスクス笑いながらなにかを読んでいた。

「夏人、見て! 見て! 掃除してたら十年前の絵日記が出てきたよ」

……十年前の絵日記……?

「ちょっと見せて!!」

絵日記は、九歳の夏休みに書かれたものやった。

あの夏は父さんの仕事が忙しく、夏休みがとれなくて旅行にも行けずに……楽しみがひとつ減った。

それで母さんが、『夏人の好きな昆虫の研究でもしたら?』と、アドバイスをくれたんやった。

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