禁断のプロポーズ
「まあ、微妙に困っています。

 育ての親がちょっと資金繰りに困ってまして、なんとかしてあげたいんですが」

「それはいまどき親孝行だな。

 吉原が今、ないからな」

 貴方、どうしても、私を売りに出したいようですね、と思っていた。

「……育ての親ね」
と呟いたあとで、彼は言う。

「お前、名前はなんて言うんだ」

「志貴島未咲です」

「そうか。
 未咲、二千万で足りるか」

「は?」

「ちょっとついて来い」

「……売りませんよ?」

「金をやるからついて来いと言ってるんだ。

 別にそういったことに不自由はしていない」

 そりゃそうでしょうね、と間近にその男を見て思った。

「ありがたいですが。

 何処の誰とも知らない人にお金を借りるわけにはいきません」

「広瀬智久だ。
 智久でいい。

 もう一度訊こう。
 返事は一度だ。

 二千万で足りるのか」

「足ります。

 あと足りないのは、千八百万ですから。

 それ以上はもう銀行が……。

 懇意にしている方が頑張ってくださったんですけど」

「じゃあ、二百万はおまけだ。

 釣りはとっておけ」

 子供のおつかいの釣りにしては、でかすぎます、と思った。
< 134 / 433 >

この作品をシェア

pagetop