禁断のプロポーズ
 


「志貴島未咲っ。
 なにやってんのよっ」

 今日も給湯室で未咲は怒鳴られていた。

 何故、フルネームで呼ぶのだろうな、と思いながら。

「あんたの淹れたお茶はまずいのよ。

 仕出しは引っ繰り返すし。

 お客様に気持ち良く過ごしていただこうって気持ちはないのっ?」

 未咲は、頭ごなしに怒鳴りつける桜に言った。

「平山さんはすごいですよねえ」

 桜が、はあ? という顔をする。

「いえ、ぱっと見、怖いし、闇雲に怒鳴ってる感じなんですけど」

「……あんた、言うわね」

「ちゃんとお客様とか、専務とか、他の役員の方のことも考えて動いてますよね」

 桜は少し考え、言った。

「お茶出しなんて仕事じゃないって言う人も居るけど。

 私は大事な仕事だと思ってるの。

 此処に緊張して来られる方も多いでしょう?

 でも、適温で美味しいお茶を飲んだら、一瞬、ほっとするじゃない。

 そういうのがお客様の表情に表れた瞬間、私はすごく嬉しいの。

 それで、話がうまくまとまったりしたら、特にね」
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