禁断のプロポーズ
 


 疲れた。

 今、電話してくる奴が居たら、殺す。

 仕事が終わり、倒れ込むように部屋に戻った未咲は、そのままカーペットに転がった。

 寝返りを打つと、ゴンッとテーブルの脚で頭を打つ。

 疲れた。

 だが、これでもマシになった方だ。

 入社してすぐなど、箸を持ったまま寝ていた。

 最初は、普通に出社するだけでも、慣れない場所で疲れるのに、別のことにまで神経を使っているので、余計にだ。

 手探りですぐ側のソファの上にあった日記帳を引っ張り下ろす。

 寝たままそれを眺めていると、スマホが鳴った。

 今、殺すと言ったのに、と思いながら、鞄を伸ばした指で引っ張り、スマホを抜き出す。

 夏目からの着信していた。

 ふわふわの茶色いカーペットの上に置いたスマホに表示されたその名前を一瞬、眺めてから出る。

「もしもし」
と夏目のものらしき声がした。

 落ち着いて聞いたこともなかったな、と思う。

 こんな声なのか。

 広瀬専務もいい声をしているが、夏目のそれの方が、もっと心地よい。

「……はい。
 志貴島未咲です」

 自分のスマホにかかってきたというのに、そう名乗るのもおかしいが。

 そういえば、あの場で名乗らなかったな、と気がついたので、そう言ってみた。
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