禁断のプロポーズ
 


 ガラスの向こうで、桜が未咲を叱っている。

 しゃんとしなさい、とか言ってるのだろうかな、と思いながら眺めていると、佐々木が笑った。

「なんだ?」
と言うと、

「いや、本当に志貴島を可愛がってらっしゃるんだな、と思って」
と言う。

「可愛がるというか。

 なにか、一度関わると、最後まで面倒見てやらなきゃいけない気分にさせられるんだ」

 子供の頃、塾帰りに拾った犬みたいに。

 そういえば、あの日も雨だったな、と思い出す。

 雨の中、目をうるうるとさせて、行き場をなくしたような顔をしている生き物を見ると、反射的に声をかけてしまうのかもしれない。

 困った習性だ、と自分で思った。

「専務、実は、志貴島をお好きとか言うことはないですか?」

 珍しく面白がっているかのように、佐々木が訊いてくる。

 社内ではクソ真面目で通っている佐々木だが、家庭内では、意外に弾けたお父さんで、小学生の娘に、お父さん、ウザイ、と言われていると聞いたことがあるが。

「ないな。
 ……は、もうこりごりだからな」
と小声でもらすと、佐々木は、は? という顔をした。
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