禁断のプロポーズ
「ほら、チョコ、こぼしてるわよ」
と桜に指摘され、未咲は、白く味気ないテーブルの上に落ちたチョコの塊をつまんで、口に入れようかどうしようか、迷っていた。
「……やめなさい、汚いから」
と見透かしたように桜に言われる。
結構大きな塊だったのに、もったいないな、と思いながら、それを桜がくれたティッシュに包んだ。
食堂の隅で、桜が買ってくれた自販機のアイスを食べていた。
食堂のおばちゃんたちが、忙しげに下ごしらえをしている音になんだか落ち着く。
「桜さん、ほんとに、いらないんですか?」
未咲は、チョコ入りのアイスもなかを割ろうとするが、頬杖をついた桜は溜息をつき、
「いらない」
と言う。
「どうしたんですか。
元気ないですね」
桜は頬杖をついたまま、せわしなく立ち働くおばちゃんたちを見ながら、
「頼むぞって言われちゃった」
と呟く。
「は?」
「専務に頼むぞって言われちゃった。
仕事以外で」
「よかったですね」
智久が頼むとか言ったら、大抵ろくなことではないのだが、と思っていたが。
自分に見えている彼と、桜に見えている彼は違う。
アイスも食べられないくらい、幸せで胸いっぱいなのかな、と思ったが、桜の表情は明るくなかった。