禁断のプロポーズ



 エレベーターに乗ったとき、また広瀬専務と一緒になってしまった。

 離れた角に立ち、未咲は前を見たまま言った。

「専務、私、結婚するかもしれません」

「……就職させてやったばかりなのにか」

 ちらと見ると、智久は腕を組み、まるきり他所を向いていた。

 防犯カメラがあるからだろう。

「恩知らずだな」

「すみません。
 今、平山さんに言われましたよ。

 あんまり早くに辞めると、入れてくれた人の顔を潰すようになるって。

 でも、私、どうしても気になるんです、遠崎課長が。

 ああ、恋愛的な意味でじゃなくてですよ」
と言うと、

「まあ、好きにしろ。

 俺がお前を推薦したことは、会長以外、誰も知らない」

 そう智久は言った。

「お前が俺の秘書に付くと言うのは、想定外だったがな」

「断ればよかったじゃないですか」

「他所で下手な動きをされて、足がつかれても困る。

 他の奴につけて、足を引っ張らせるという手もあったが」
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