冷酷皇帝と偽りの花嫁~政略からはじまる恋の行方~
(9)

 ジェイド.マンの仕事の内偵も終わり、リューリはまた
 お妃教育とお茶会の日々にもどっていた。

 変わったことといえば、お茶会でひとしきり煩かった赤ん坊
 の話題が、ほとんど持ち出されることがなくなったこと。

 アシュレの態度といい、貴族達の態度といい、リューリには
 わけのわからないものだったが、以前より居心地がよくなった
 ことは確かだ。

 

 リューリは心穏やかな日々を過ごしていた。

 そんな中、久しぶりの夜会が開かれるという案内が届いた。

 
 王宮ならば、夜会はつきものだが、アシュレは戦後の復興が先だ
 といって、そういった催しを行なわなかった。

 だが今回、地方に引っ込んでいる、アシュレの祖父の血縁のものが
 訊ねてくるという。

 婚姻の儀にさえでてこなかった人達が、どうして今頃?とリューリは
 思ったが、くわしいことはわからない。



   「夜会は婚姻の儀以来ですもの、腕がなりますわ。」



 エルダはリューリを美しく飾り立てることに必死だ。

 エルダがリューリのために選んだのは、藤色のドレス。

 蒼灰色から光の加減で、うすい紫色に色をかえるリューリの瞳に
 そのドレスはよくあった。

 髪は上の方だけを結い上げ、下は肩から背中へとおろされた。

 光をはらんで輝くそれは、クルセルトにおいてはめずらしい淡い色。

 クルセルトにも金髪はあるが、金髪に限らず、どの髪の色も濃い色
 をしていた。
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