冷酷皇帝と偽りの花嫁~政略からはじまる恋の行方~

 熱い吐息とともにはきだされるアシュレの震えたような声が
 リューリの耳元で聞こえる。

 リューリは素直にそっとアシュレの肩にもたれかかった。

 今はただ、アシュレの腕の中が心地よかった。





 結局、取引の現場をおさえることは出来なかったが、小屋からは
 数々の証拠の品を押収する事ができた。

 せめて馬車の確認が出来ていればと、リューリは悔しがったが、
 アシュレは、そんなリューリに ”リューリが無事だったからよい”
 と答えた。



 リューリは戸惑っている。

 あのときの抱擁といい、そんな事を言われると、まるで自分が
 アシュレにとって大切な人であるかのように錯覚してしまう。

 さらにあれ以来、アシュレはリューリのことを名前で呼ぶ。

 以前は ”皇妃” と呼んでいたし、酷い時は ”おまえ” 呼ばわり
 だった。

 そのことも、リューリの戸惑いを強くしていた。


 なんだか最近のアシュレはおかしい。

 そういえば、冷たい目で見据えられなくなったなあと思う

 どういうことだろうか、、、、?
< 95 / 159 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop