キャラメルに恋して






「だいまぁ〜」



海から少し歩いたところの白い洋風の家。それが私の住んでいる所。



「あら、おかえりなさい」




いつものように、ドアを開けると、珍しくお母さんが立っていた。





だけど、お母さんは仕事用のスーツに身を包み、頭のてっぺんから爪の先まだお洒落をしている。





「お母さん、今日仕事なの?」




お母さんは俗に言う、キャリアウーマン。



私が小さい時に、お父さんと離婚してからこの仕事を始めた。



そのお父さんは、もう死んじゃったけど、お母さんは女手一つで私を育ててくれている。





「そーなのよ。今日は取引先の方のパーティなの。遅くなるから、あとは自分でお願いねぇー」





――――…パタン






ドアが閉まる音が、部屋に寂しく響く。




この音が小さい頃から嫌いだった。この音を聞くたびに、一人なんだって実感していた
から……。





「はぁ……、また仕事か。久しぶりに会えたのにな」



実はお母さん、ほとんど家に帰らないの。


ビジネスホテルにずっと泊ってるらしい。


新しい男の人でもいるのかな…?








―――…パタ パタ パタ パタ



そんな事を一人寂しく玄関に突っ立って考えていると、突然、軽快なスリッパの音が聞こえてきた。





「雛ぁ〜?帰ってるの?」







< 35 / 358 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop