キスより甘くささやいて
私は颯太の家に荷物を移した。
引越しする前に、颯太は私の両親に挨拶をしに来た。
「美咲さんを愛しています。僕は結婚を考えています。」と真剣な表情だ。私が、
「少し、気が早いけど、一緒に暮らすことにしました。」
とニッコリ、両親に笑いかけると、父がちょっと、驚いた顔をしたけど、
「美咲も、君ももう大人だ。好きにしなさい。
…出来るだけ早く、籍は入れて欲しいが…」と少しだけ、心配そうな顔をした。颯太は
「僕は、出来るだけ早く籍を入れたいと思っています。」
と私の顔をニッコリ見つめてくる。
私が肩をすくめて微笑むと、両親は安心したみたいだ。
予定は未定だ。
必ずしも、上手くいくとは限らない。
私は両親に心の中で、ゴメンと言っておいた。
弟の祐樹が会社から戻って来て、
「美咲、風間 美咲って名前になるんだ。」と笑いかける。
「その予定ですけど」と笑い返すと、
「俺は、兄貴が欲しかったし、今の風間さんは結構イケてるし、
人気パティシエって事は仕事も出来るってことだろ。
美咲、優良物件じゃん。」というので、
「ひとの恋人を、建物みたいに査定しないで下さい。」
と顔をしかめてから、笑っておいた。


颯太は家の2階の角にある主寝室を片付け、
ダブルベッドを入れて、自分の部屋のベットを処分した。
広い部屋はやっぱり、ブルーが基調にしてあって、
2方向にある窓からは青い海と、江ノ島が見える。
オーシャンフロントのその部屋は窓を閉めていても、波の音がきこえていて、
颯太と夢中で抱き合う時、海に包み込まれている錯覚を覚える。
颯太は優しく何度も私の名前を呼ぶ。
私も何度も颯太の名前を呟きながら、颯太に溺れていく。

困った。
私は颯太をとても愛している。
< 101 / 146 >

この作品をシェア

pagetop