キスより甘くささやいて
第6章 それぞれの想い

水色のエアメール

季節はもう冬だ。
海岸線を走る車は減ってやっと、地元の私達も海岸線を使えるようになる。
観光シーズンの海岸線の混雑にハマると、
いつになったら、目的地に着くかちっともわからなくなってしまうほどだし、
もちろん、食事に使うおしゃれなお店は、夏の間は使用できない。

gâteauは、クリスマスケーキの予約や、
お歳暮用のお菓子を予約するお客様が増えてきているので、
また、忙しくなってきた。
12月に入ったら、
夏の間のようにティールームをしめ、
颯太と、私は2回出勤する事になっている。
忙しいけど、充実した日々。
颯太と一緒に暮らすのはとても温かい気持ちにでいられる。
颯太の腕の中で眠る毎日は幸せだ。
早起きの私達は朝、抱き合う事も多いけれど、
私は出来るだけ、朝、家事をするようにしている。
颯太が日課のランニングに出ている間、2階のそうじをしたり、
(広すぎる家は、私の手に余るので、1階部分はハウスクリーニングを頼んだままだ。)
夕飯の下ごしらえも済ませてしまう。

この数日、颯太の部屋の机の前で立ち止まっている。
フランスから届くエアメールは毎月届いている。
颯太はサッと目を通し、
また、机の上の箱の中に積み上げる。
私は何度も、手紙を手に取ろうと試みるけど、
勝手に、手紙を持ち出すのは、心苦しいし、
悪い事なのはわかっているので、踏み切れない。
もうすぐ颯太がランニングから戻ってくる。
私は決心して、先月届いた手紙を手に取って、
丁寧にクリアファイルにしまってカバンに入れた。


自分のやっている事に罪悪感で溜息が出る。
でも、きっと、これが出来るのは私だけだ。


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